Essay

脳内思考たれ流し。

仮定法

If you could have told me everything

You would have found what love is

If you could have told me what was on your mind

I would have shown you the way

X JAPANのバラードの名曲「Tears」より、YOSHIKIの独唱部分からの引用です。小泉純一郎の影響で、今は「Forever love」がX JAPANのバラードの代表になってますが、この曲こそYOSHIKIの世界観を現す代表曲だと思っています。

Visual系を確立したX JAPANの曲では、愛という言葉が何度も登場しますが、記憶の限りだと恋という言葉は出てきません。というのも、YOSHIKIが歌詞に乗せて伝えたい愛とは、恋人同士との愛ではなく全て家族愛だからです。そこにはYOSHIKIの人生が深く関わっています。

YOSHIKIの父親は、彼が10歳のときに自殺で亡くなっています。病弱だったYOSHIKIに音楽を教えてくれたのは父親で、YOSHIKIはそんな父を深く愛していましたが、ある日学校から家に帰ると、父親が首を吊っていました。YOSHIKIは悲しみに暮れるのではなく、ただただ何が起きたのか理解できなかったそうです。思うに、10歳頃というのは死という概念を理解できるか理解できないかの境目にあたる年齢かと思います。自分も、小学生の頃に親しい親戚が亡くなったとき涙は出ませんでしたが、中学生の頃に親しい親戚が亡くなった際は涙が止まりませんでした。YOSHIKIは父親という存在の死を理解できないまま、父親への家族愛を永遠に失ったまま、涙の行き場さえなく生きて来なければならなかったのです。この父親の死というのは、YOSHIKIの音楽、人生観を決定づける大事件でした。

「Tears」はYOSHIKIが父親に向けて宛てたバラードになります。冒頭に挙げたYOSHIKIの独唱部分の「You」は、父親を指しています。

 

もし貴方が私に全てを伝えることができていたなら

貴方は愛とは何かを知っただろう

もし貴方が私にその心の内を伝えることができていたなら

私は貴方に道を示しただろう

 

YOSHIKIの深い悲しみと後悔が、この歌詞に現れています。

 

さて、英語の話。

仮定法って何?って聞かれたら、簡明に答えられるでしょうか?一言で言うならば、「現実とは異なる話をするための、特殊な動詞変化」です。

大学時代に塾講師として4年間勤めていたが、仮定法ってif、、、?と答える高校生の多いこと!

①If it is sunny tomorrow, I will go swimming.

②If it was/were sunny tomorrow, I would go swimming.

①はただの選択、可能性の話。明日晴れるか晴れないか分からないけど、晴れるんだったら海に行くという意。一方②は仮定法。動詞、助動詞が過去形になっている点がポイント。明日晴れたら海に行く、まあ明日晴れるなんて現実的に絶対あり得ないけどね!という意。(ちなみに、もともと特殊な動詞変化になるので、文語では主語に関わらずwereを用いる場合が多い)

②の文で仮定法はどーれだ?と言われたら指差すのは、was/wereとwouldです。

現実とはかけ離れたことを表現する仮定法は、動詞を過去形にすることによって表されます。何故か。

 

過去形=距離感

これが動詞の過去形のコアイメージです。

 

①時間的距離感→いわゆる過去形

心理的距離感→would you〜? could you〜?など控えめを表す敬語表現etc.

③現実との距離感→仮定法

 

③のように、現実とはかけ離れたことについて述べるために、動詞の過去形が用いられます。このときの過去形には時間的過去の意は含まれません。

ちなみに、仮定法の「法」とは、誤解を恐れずに言うと、言語学的には動詞の形の変化を言います。

さらにちなむと、仮定法で時間的過去について述べるためには、have +過去分詞という完了形の形を借用します。

If you could have told me everything

You would have found what love is

もし貴方が私に(あの時)全てを伝えることができたならば(現実にはできなかったが)

貴方は愛とは何かを(あの時)知ることができただろう(現実にはできなかったが)

 

ここまで来たら、仮定法はifという思い込みは解消されるかと。仮定法は現実とは異なることを表現するので、ifに代表されるような条件を表す表現と結びつきやすいだけです。以下、ifのない例。

①A gentleman would not act like that.

紳士ならばそんな振舞いはしないだろう

②The party would have been much more fun with her.

彼女がいたらパーティはもっと楽しかっただろう。

③I wish I could solve this problem!

この問題が解けたらなあ!

④He looked as if he had seen a ghost.

彼はまるで幽霊を見たかのようだった。

 

大学受験や英語資格試験的には、仮定法の理屈と文法の形さえ分かってしまえば、あとは仮定法がどんなパターンの表現と結びつくのかということを覚えるだけです。簡単。

 

改めて、「Tears」の一節を再掲。

If you could have told me everything

You would have found what love is

If you could have told me what was on your mind

I would have shown you the way

YOSHIKIが抱いている深い悲しみと後悔が仮定法を通してよく伝わる一節です。「Tears」は名曲なので是非聴いてみてください。